DOMOの支援金を活用した活動報告

「人間と自然の共存」と、DOMOポイントの活用について

大雪山・山守隊の岡崎です。
登山道整備がなぜ必要なのか?大雪山・山守隊はいつも考えています。
突き詰めていくと「人間と自然との共存」というテーマに行きつきます。
人間という利用者として考えるならば「歩きやすくて安全であればよい」と考えるのが一般的であり、今までの管理はそうなってきました。
しかし現状の山岳荒廃はその考えでは対応できないところまで来ています。
「人間と自然との共存」。
もしかすると今までの管理は人間の視点でしか見ていなかったかもしれません。
自然と共存していくならば、利用者視点だけでなく自然や生態系の視点でも管理を考えなければならないと思っています。
そして生態系の視点で山岳荒廃を見るようになった時、今までと全く違ったものが見え、全く違う管理のアイデアが生まれるようになりました。
 
 
「人間の利用」と「生態系の構造」を深く理解すること。それらがかみ合ってきたとき、自然の力を借りることで侵食を止め復元に向かう方法がありました。
整備した場所には植物が芽生え、根を張ることで流水にも流れない土壌環境が作られる。
自然に合わせて配置された木や石組みの隙間に植物が伸びると、侵食などなく、あたかも自然のままであるような景観美も生まれます。
しかしこれらの考え方や技術は一朝一夕で身に着くものではありません。
ひたすら自然を観察すること。
整備をした場所を見続けて変化を記録すること。
風景を作っている自然の成り立ちを見出すこと。
荒廃の原因を理解すること。
自然の時間軸で観るようにすること。
「人間はどうしたいか」ではなく「自然はどうなりたいのか」を考えること…。
 
YAMAPのDOMOポイントで行なったことは、ただ登山道を整備していくのではなく、整備に関わる人の視点を増やし、自然を守る人を作ることも大きな目的でした。
また、限界が見えている現状の管理体制ならば、全く新しい手法や整備方法を作っていくことも必要なことでした。
この支援をいただき、できたことは、管理にとって必要な体制つくりでした。
  • 白雲岳周辺の登山道を直すことで、視野の広い整備人を作ること
  • スノーモビルを利用してヘリコプターに代わる資材運搬方法を作ること
  • ボランティアができる管理体制を作っていくこと
  • 近自然工法の理解を深めること
 
 
お金を使って整備個所を増やすことも大事ですが、整備を教えられる人が増えることやボランティアが参加できる体制を作ることができれば、これからの整備量は大きく違ってきます。
DOMOポイントを使ってできたことは、これからの大雪山の大きな財産になっていくと思います。

今後の活動と目指すビジョン

 
ですが、まだまだやるべきことがあります。
正しい山岳管理の状態とは「利用や気候変動による荒廃」と「保全による自然復元」が拮抗する状態であること。
今はまだ利用による荒廃に保全が全く追いついていかない状態です。
これを解決していくには…
  • 大雪山国立公園の荒廃状況を記録すること
  • 記録したものから維持管理にかかる経費を割り出すこと
  • 荒廃のスピードや変化を予測していくこと
  • 経費を捻出する手段を作ること
  • 費用が少なくてもできる整備方法を作りあげること
  • 維持管理やそのための費用が必要だということを利用者や地元民に理解してもらうこと
  • 生態系視点を持った管理者を育てること
などなど…
大雪山が国立公園になって90年。この間に崩れてしまった環境を復元させるにはそれ以上の年月がかかるかもしれません。
きっと管理体制が出来上がり、自然環境が荒廃から復元に変わった時には自分はもうこの世にいないでしょう。
自分がいなくなっても、しっかりした管理体制があれば自然と人間は共存できると思っています。
そのきっかけだけでも作っていこうと思っています。
 
自分にはビジョンがあります。
国立公園にはたくさんの民間整備団体があり、それらは共有理念や高い技術を持ち、ボランティアとともに毎日どこかを直している。
整備は労力の提供という意味だけでなく、楽しさが深まる自然観察にもなり、環境教育、地域の誇りになる活動としてしっかりと整備指導者が伝える。
行政は民間団体のバックアップを行い、公的資金を集める。
民間団体も自ら稼ぐことで人任せにならない自発的行動をしていく。
利用者も環境負荷と環境保護に理解を持ち、受益者負担を担う。
いつかこれらが体制として出来上がった時には、日本の自然がもっと価値あるものに変わり、多くの人が自然へと興味を持つようになり、「人が来るほどに美しくなる山」という管理に近づいていくと思っています。
大雪山・山守隊としてできることは小さなことですが、様々な人とかかわりを持ちながら、大きなビジョンへ向かって進んでいこうと思っています。
いつか皆様に、保全された自然とそれを守る管理体制を伝えられるように努力したいと思っています。
ご支援、ありがとうございました。
一般社団法人 大雪山・山守隊 代表岡崎哲三