「湯河原幕岩クライミングエリア」リボルト作業のご報告

ご支援のお礼と、リボルト作業のご報告

 
 
多くの方にご支援いただいたDOMOの資金を利用して、2022年8月8日~10日の3日間、神奈川県のクライミングエリア「湯河原幕岩」で、リボルト作業を行ないました。最初に、ご支援をいただいたみなさまに、改めて心より御礼を申し上げます。
作業環境としては厳しい真夏の日程となりましたが、事故やトラブルもなく、無事に作業を終えることができましたので、その内容をご報告させていただきます。
今回のリボルトには、日本フリークライミング協会が定める資格を取得した「リボルト職人」6名が作業にあたりました。
湯河原幕岩のクライミングエリアには、広大な範囲にいくつもの小さなエリアが分布していますが、そのなかから、事前の調査で優先的に作業が必要だと判断した、茅ヶ崎ロックの「アリババの岩場」「シンデレラフェイス」「桃源郷」の3エリアを中心にリボルトを行ないました。
 

リボルト作業レポート

 
リボルトに必要な資材を担ぎ、猛暑の中20分ほどかけて作業場までの斜面を登ります。
リボルトに必要な資材を担ぎ、猛暑の中20分ほどかけて作業場までの斜面を登ります。
 
 
目視でボルトの状況を確認したら、作業用のフィックスロープを設置します。
目視でボルトの状況を確認したら、作業用のフィックスロープを設置します。
 
固定したロープをハンドアッセンサー(ユマール)と呼ばれる特殊なギアを使って登り、空中にぶら下がった不安定な状態で、繊細で力のいる作業を行います。
固定したロープをハンドアッセンサー(ユマール)と呼ばれる特殊なギアを使って登り、空中にぶら下がった不安定な状態で、繊細で力のいる作業を行います。
 
リボルトの対象となった旧式の支点。アルミ製のハンガーをカットアンカーというボルトで固定したもので、クライミングの支点としては強度が足りません。
リボルトの対象となった旧式の支点。アルミ製のハンガーをカットアンカーというボルトで固定したもので、クライミングの支点としては強度が足りません。
 
抜いてみると、ハンガーを固定してたボルトは岩に埋まっている長さも短く、フォールの衝撃で抜ける危険が否定できない状態でした(写真左)。これを充分な強度と耐久性のあるもの(写真右)に変更します。
抜いてみると、ハンガーを固定してたボルトは岩に埋まっている長さも短く、フォールの衝撃で抜ける危険が否定できない状態でした(写真左)。これを充分な強度と耐久性のあるもの(写真右)に変更します。
 
ステンレススチール製グルーイングボルトを、グルー(ボルトを岩に固定するための接着剤)を使って設置するため、長期間安全性が保てます。
ステンレススチール製グルーイングボルトを、グルー(ボルトを岩に固定するための接着剤)を使って設置するため、長期間安全性が保てます。
 
今回の作業で交換した、古いボルトやハンガー。
今回の作業で交換した、古いボルトやハンガー。
 
3日間の作業で、最終的に以下の5エリア12ルートで整備を完了しました。老朽化の進んだ支点や、強度不足の資材を使った支点などのリボルトを行ないました。JFAでは、最新の資材や技術を使ったリボルトを行なっていますが、それで安全性が完全に保証されるわけではありません。リボルト済み、未実施にかかわらず、使用可否の判断はすべてクライマー自身が行なうというクライミングの原則を認識して、行動するようにしてください。
 

今回実施したリボルト整備のエリア詳細

※カッコ内は支点数です。
【アリババの岩場】 ・アラジン…支点(3) ・アリス…終了点+支点(2) ・アリス右…支点(2)
【シンデレラ】 ・トムソーヤ…TR支点+支点(5) ・かぼちゃの馬車…支点(2) ・オズ…終了点+支点(4)
【桃源郷】 ・フック船長/終了点
【黒望峰】 ・フェードイン/終了点+支点(6) ・フェードアウト/終了点+支点(4) ・ネグリッド/支点(3)、下部フィックスロープの張り替え
【割礼塔】 ・ダークヘラー/支点(3) ・ワンダーマリア/支点(4)

今後の活動について

 
 
湯河原幕岩は、温暖な気候で冬でも快適に登れる岩場として、多くのクライマーに親しまれていますが、海に近いことから、潮風などの影響でボルトの腐食が進みやすいエリアでもあります。
今回の整備で、秋のハイシーズン前に、利用者の多いルートのリボルトを終えることができましたが、湯河原幕岩にはまだ多くの整備が必要なエリアが残されています。引き続き、クライマーからの情報などを得ながら、岩場の環境整備を続けていきたいと思います。作業に際してはルート利用の制限や作業音などで、クライマーや周辺を利用されるみなさまにもご迷惑をおかけすることがありますが、ご理解をいただけますと幸いです。
 
 
また、全国には同様に、老朽化や過去の誤った施工が原因で、充分に安全性が確保できていない支点や終了点が多数存在します。すべてのエリアでリボルトを完了するには、膨大な時間と資金が必要ですが、事故を防ぎクライマーの安全を守るために、JFAでは引き続き、各地でリボルト活動を進めていく予定です。同時に、正しいリボルトの知識や技術を伝えるための「リボルト職人」の育成や、支点の安全性を自ら判断できるよう、クライマーに向けての安全講習会の開催なども、積極的に進めていきたいと思います。今後ともJFAの活動にご支援をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。